小説と音声作品の台本、書いて稼ぐならどっち?両方売った実感で比較する
書く力を売る先として、小説のオーダーメイドのほかに「音声作品の台本」があります。シチュエーションボイスなどの読み上げ用シナリオを、依頼を受けて書く仕事です。
自分はSKIMAで両方を売ってきました。調べてみると、この2つを並べて比較した記事がどうも見当たらないので、両方やった実感で書いておきます。先に結論を言うと、単価は台本のほうが高いけれど、書きやすさまで含めると差は相殺されて、どちらが得かは向き不向きで決まる、というのが自分の答えです。2026年7月時点の話です。
音声作品の台本という仕事
台本の依頼は、演者さんが読み上げて音声作品として販売するためのシナリオを書く仕事です。小説と同じくSKIMAやココナラに出品カテゴリがあり、X(Twitter)やCi-enでサークルが直接ライターを募集していることもあります。
形式は小説とはっきり違って、セリフとト書き(演技や効果音の指示)で構成します。尺の目安は1分あたり200〜300字ほどと言われていて、自分が受けていた依頼は1本6,000〜8,000字程度でした。納期は10〜14日くらいで、これは小説の依頼とほぼ同じ感覚です。
自分の受注の形も小説と同じで、「音声台本書きます」の商品を出品して、依頼が来るのを待つスタイルでした(なお2026年6月いっぱいで、台本の受付はいったん止めています)。
単価は台本のほうが高い。ただし理由がある
自分は台本の単価を、小説の2倍に設定していました。金額でいうと1文字1円です(2026年6月時点。小説側の値付けの経緯は値付けの記事に書きました)。
倍にした理由は気分ではなくて、買い切り(著作権譲渡)だからです。台本は納品したら権利ごと渡して、自分の名前は出ません。作品は依頼者のものとして販売され、こちらには以後何も入らない。その「権利を手放すぶん」を単価に乗せるのが、自分なりの計算でした。
まわりの出品を見た印象では、台本の中央値は1文字2円くらい。市場の調査でも、シチュエーションボイス系の台本はおおむね1〜3円のレンジに収まっていて(2026年7月時点・出品ページの実例ベース)、小説のオーダーメイド相場(1円前後)より一段高い水準です。
書く技術は、けっこう違う
ここが一番伝えたいところです。台本は、小説より書きづらい。
理由は地の文が使えないことに尽きます。小説なら情景も心情も地の文で説明できますが、台本はセリフで説明するしかありません。状況の変化も、感情の動きも、ぜんぶ声に乗る言葉だけで伝える。これが思った以上に難しく、しかも一人の話者が長く話し続ける形式なので、セリフのバリエーションもたくさん要ります。同じ言い回しばかりだと、聴いていて単調になってしまうからです。
小説が書ける人なら台本も書けるだろう、と思って入ると、たぶん面食らいます。求められる筋肉が違いました。
やり取りの違い。依頼が「ざっくり」になりがち
もうひとつ実感したのが、依頼のされ方の違いです。
台本の依頼者は、納品物を趣味で読むのではなく、販売する前提で見ています。商品の材料なので、見る目はシビアです。その一方で、小説の依頼者と比べると、最終形を具体的にイメージできていない人が多い印象でした。依頼内容がざっくりしていて、こちらで形にしながら固めていく場面が増える。要望を聞き出して補う力が、小説のとき以上に要りました。
権利と名前の話
前述のとおり、自分が受けた台本は買い切りで、名前は出ませんでした。書いた作品が世に出ても、それが自分の実績として表に残らないということです。
ここは好みが分かれるところで、名前を残したい人には物足りず、匿名で淡々と稼ぎたい人にはむしろ都合がいい。単価に上乗せする根拠にもなるので、値付けとセットで考えるのがいいと思います(慣行は依頼ごとに違うので、受ける前に必ず条件を確認してください)。
で、どっちが稼ぎやすいのか
自分の実感で正直に言うと、差し引きゼロに近いです。
台本は単価が2倍だけれど、地の文が使えないぶん書きづらさも増える。かかる労力まで含めると、2倍の差は妥当な値付けで、時間あたりの稼ぎやすさに大きな差は感じませんでした。だから「台本のほうが単価が高いから得」と単純には言えません。
決め手は向き不向きです。自分は小説の形式が好きなので、書いていて楽しいのは小説でした。逆に、セリフだけならいくらでも思い浮かぶというタイプの人なら、音声台本のほうが向いています。単価も高いので、その人にとっては台本のほうが「楽して稼げる」側になるはずです。
まとめ
小説と台本は、同じ「書いて稼ぐ」でも別の競技でした。単価は台本が上、書きやすさは人による、権利は台本が買い切りで名前が出ない。どちらか迷うなら、試しに短いセリフ劇をひとつ書いてみて、苦にならないかどうかで判断するのが早いと思います。
コミッション全体の始め方はコミッションという選択肢に、小説側の実体験はSKIMAで小説のオーダーメイドを売った話に、何が売れるかの考え方はコミッションで何が売れるかにまとめています。
この記事の前提
- 単価・分量・納期はすべて筆者一人の実体験(2026年6月までの受注分・2026年7月時点の記述)と、出品ページの実例観察に基づく規模感です。相場はレンジで変動し、ジャンルや依頼内容で大きく変わります
- 権利・名義の慣行は依頼ごとに異なります。受注前に必ず個別の条件を確認してください
- 一定額以上の収入には確定申告が必要になる場合があります。税務の判断は税務署または税理士に確認してください